日本生理心理学会
日本生理心理学会について
日本生理心理学会理事長 一谷 幸男

 生理心理学(physiological psychology)は生理学的な方法を用いて、心のはたらきや行動の仕組みを解明しようとする実証的な科学です。その研究手法は多岐にわたりますが、当初は動物の脳を刺激したり損傷したり、あるいは薬物を投与するなどの生理学的変数操作にともなう行動や反応の変化から、行動のメカニズムに迫ろうとする動物実験が主流でした。しかし、そのような手法を人間に適用することは困難でした。その後、様々な非侵襲的な生理学的計測方法の発展とともに、それらの方法を用いて行動を操作した際の生理学的変化から行動のメカニズムを解明しようとするアプローチが盛んに行われるようになり、精神生理学(psychophysiology)と呼ばれています。いずれのアプローチにおいても、行動の背後に中枢過程が存在することが仮定され、中枢過程の作動状態をも含めて行動の仕組みを解き明かそうとする取り組みが益々活発に展開されるようになりました。
 本学会(日本生理心理学会)の英語名称"Japanese Society for Physiological Psychology and Psychophysiology"にも、このような研究手法の特色が反映されており、感覚、知覚、注意、意識、睡眠、学習、記憶、情動、動機づけ、言語などの認知的諸機能や、子どもの発達、精神疾患、犯罪、スポーツなど幅広い分野において、生理心理学的研究が拡がってきています。
 本学会の起源は、当時の東京教育大学・岩原信九郎教授の呼びかけで1968年に開催された第1回「生理心理学懇話会」にまで遡ります。第1回懇話会の参加者は31名で、その後も年に数回開催されましたが、1970年の第7回懇話会で早稲田大学・新美良純教授の提案により「生理心理学・精神生理学懇話会」と改称されました。さらに、1982年ノートルダム清心女子大学で開催された第21回「生理心理学・精神生理学懇話会」総会において、懇話会代表であった関西学院大学・宮田 洋教授から「学会創設」が提案され、「日本生理心理学会」が発足しました。翌年1983年には「第1回日本生理心理学会」が(現)つくば市の製品科学研究所で開催され、学会誌「生理心理学と精神生理学」が1983年12月31日に創刊されました。学会誌では、原著論文、短報、テクニカルノート、評論、討論を邦文・英文のいずれであっても受け付けており、現在は毎年3号を刊行しています。
 創設時の会員数は、1984年6月時点で正会員174名、学生会員46名、賛助会員10名、合計230名でしたが、2017年4月時点では会員数も582名(正会員467名、学生会員92名、賛助会員6名、名誉会員17名)と大幅に増加しています。学術大会においては、大学院生や若手研究員の発表や討論が活発で、懇親会にはいつも若い研究者の方々が多数参加されて議論が盛り上がるのが本学会の特色といえましょう。また、若手研究者の研究を奨励するため「日本生理心理学会優秀論文賞」を設けて、前年度の機関誌掲載論文から優秀論文を選考して表彰しています。
 2014年9月には、広島国際会議場において第17回国際心理生理学会議(17th World Congress of Psychophysiology, IOP2014)が開催されました。この国際会議がアジアで開催されるのは初めてのことでした。さらに2016 年の18回会議(IOP2016,キューバ)では、日本生理心理学会が国際心理生理学機構(IOP)の連携学会(affiliated society)として正式に承認されました。これらをきっかけにして、わが国の生理心理学・精神生理学の発展と、本学会の国際的な活躍が今後益々期待されています。
 多くの研究者や大学院生の本学会への加入をお待ちしております。

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